奄美<環境文化>教育プログラムのしおり
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之島在之島在住徳 住徳 常 加奈子さん16 世界自然遺産登録を果たした徳之島と奄美大島、アマミノクロウサギが生息している世界で二つだけの島ですが、その地形はずいぶん異なっています。 これまで地理学の分野において、南西諸島では「高い島」「低い島」に大別する島嶼分類が行われてきましたが、徳之島の「高い島」、沖永良部島の「低い島」という地形分類は、ご指摘のように「しっくり」こないものでした。 それで奄美博物館では、地形の優先的要素から再分類してみる方法をとり、徳之島は「山と台地の島」になり、沖永良部島は「台地と山の島」になった次第です。 「緻密にしっくりくる」ように実感していただけてよかったです。 徳之島は、海からみた島のシルエット、島の地形的環境が、沖縄諸島の久米島ととてもよく似ています。琉球国が編纂した神歌集『おもろさうし』では、「かねのしま」と呼ばれる島の美称が出てくるのですが、理由は不明ですが、久米島と徳之島だけが「かねのしま」と呼ばれています。興味深いですよね。 奄美群島、さらには琉球諸島まで、相対的理解ができる視点と方法が「環境文化論」です。ぜひ俯瞰的に島々をみる視点も身につけていかれてください。  ご指摘のように、「島は島」、まさしくそのとおりです。 その土地に暮らしている人たちに、国境がみえるわけではありませんし、行政的な所属が変わっても、いきなり暮らしが変わるわけではなく、噂話が飛び交う中で、少しずつ暮らしに変化が現れていくものだったと思います。 お祖父様の「島から出ないといけないくらいなら何もせずこのまま島で死ぬ」という言葉には、島、シマに対する居場所としての安心感が感じられます。 環境文化に醸成される暮らしについて、そうした心理的側面に目を向けられたのはすばらしい着眼点でした。 歴史的に何度も繰り返された奄美群島の行政統治は、島に暮らすみなさんにとって、よい暮らしをもたらすことはなく、いつも非常に厳しい生活に向き合わなければならないものでした。それは「結(無償の労働協力等を等価交換で行う社会的連帯)」に加えて、みんなで連帯を強めていくことでレジリエンスを生み出し、切り抜けていったのでしょう。講義の感想や質問を書いてください。R.3年 | 科目103 |奄美の環境文化の基礎2(自然) 高梨講義をふまえつつ、あなたが奄美史で印象に残ることや関心を覚えたことについてまとめてください。また、講義の感想や質問などがあれば書いてください。 徳之島も昭和28年12月25日に本土復帰したとずっと思っていたので、この講義で北緯27.5度以北の日本返還が昭和27年にあったことを初めて知り大変驚きました。 「今の日本は中世に形成された“日本”と“琉球”の2つの国家境域から成っている」という言葉が印象的でした。そして、今はそれこそ国境としては日本国に分類されているけれど、精神的に琉球列島は今でも琉球国として存在している、と徳之島に住みながら日常的にもよく思っていることを改めて感じました。 一部の人間たちの判断によって、本土の人に干渉されたり支配されたり、時には外国扱いされたり、そして日本に返還されたりと、目まぐるしく環境が変化していきましたが、島の方々はどの時もいつでも「島は島」と思って過ごしておられたんじゃないかと思います。 私の祖父は徳之島で生まれ育ち、「島の外は本土も含めて全て外国」という感覚だったようです。鹿児島で手術をすれば治るといわれたがん治療も「島から出ないといけないくらいなら何もせずこのまま島で死ぬ」と最期まで頑なでした。 当時10代の私は祖父のその感覚が理解できませんでしたが、今なら「余命僅かで、外国で手術すれば治るかもしれない」と言われても行きたくないという気持ちに共感できます。 様々な歴史の変化に翻弄されながらも結の精神で助け合って生き残ってきた島の方々に改めて尊敬と感謝の気持ちが沸いた講義内容でした。R.3年 | 科目104 |奄美の環境文化の基礎3(歴史) 大保 由佳里さん高梨 奄美群島をあらゆる視点で分類してみると、よく似ている島々でも実は異なることが浮き彫りになっておもしろかったです。 また、高梨先生が地形の優先的要素を分類指標として再分類されたことも興味深かったです。それまでの分類よりさらにその島々の特徴が緻密にしっくりくる分類となり、まさに“ピタッとあてはまる”という感覚でした。 徳之島の者として、島は地質、河川の特徴や平坦地においても「山の島」と「台地の島」の両方の要素を併せ持っていて、夜光貝一つ見ても他の島のものと差異がある、久米島と似ているということを学べたのはとても大きな収穫でした。 今後学ぶさまざまなことも新たな視点で見られそうで今からワクワクしています。 徳之島の環境文化を語る上で大切なキーワードが多く得られました。 ありがとうございました。

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