奄美<環境文化>教育プログラムのしおり
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美大島在美大島在住奄 住奄 前川 晴紀さん20  「環境文化」は、捉えたい対象を表現する言葉が存在しなかったがために、新しく生み出された用語だという見方もできます。ただ、「環境文化」を抽象的に語るだけでは、現実を変える力にはなりません。島の方が、この概念からどんな触発を受け、どう受け止めるのかが、とても大事です。今回「環境文化」という言葉に触れて、気持ちが揺さぶられたり、ものの見え方が少し違って見えたとすれば、その感覚を大切にして下さい。 ところで、大人にとっての学びは、子どもの頃のように新しい知識を詰め込んでいくものではなく、既成の価値観や考え方を学びほぐすことにあります。内容のレベルが高いといっても、提供される知識をうのみにするのではなく、ぜひご自身の経験と照らし合わせながら「本当にそうだろうか」と立ち止まって考えてみてください。一人一人の経験が大切な学習資源ですから、感じたことや思ったことを言葉にしながら、お互いから学び合えるようにしましょう。 この教育プログラムでは、講師の話を聞いて、それを自分自身がどう理解し、受け止めたのかについて、他の受講生に話す機会や、レポートを通して文字に起こす機会が用意されています。苦手意識を持つ方にとっては、少々きつく感じることもあるかもしれませんが、回を重ねることで知らぬ間にスムーズに表現できるようになっていくと思います。特にレポートは、自分との対話であり、時間をかけて筋道を考えることで、自分でも気づかなかったことを発見したり、自分が大切にしたいことや伝えたいことを改めて自覚し、説得力をもって表現できるようになる手助けになると思います。 ところで、「言語化」を含めて学知の修得は、たとえば大学という訓練の場があるので、身につけることが比較的容易ですが、逆に土着知のほうは、習得のための組織だった場所がないので、誰もが簡単に身につけることができない難しい世界だと思います。ですので「土着知の方が得意」という与沢さんは、すでにこの時点で他の人よりも優位な立場にあるといえます。土着知に学知が加わるということは、鬼に金棒ですね。与沢さんが、感覚的に身につけている直感を大事にしながら、その正体を明らかにしつつ、第三者に伝えるための言葉を紡いでいけるよう頑張っていきましょう!初めての講義はいかがでしたか。次にの二つの設問に答えて下さい。(1)講義を通して大事なメッセージとして受け止めたことは何ですか。(2)あなたにとって今回の教育プログラムで探究したい「答えのないこと」は何ですか。ほかにご質問、ご感想などがあれば、ご自由にお書きください。R.3年 | 科目101 |奄美の環境文化入門小栗(1)講義を通して疑問やわからなかったことを中心に感想をお書きください。(2)あなたにとって今回の教育プログラムで探究したい「答えのないこと」は何ですか。もしくは、大事にしていきたいことは何ですか。(3)ほかにご質問、ご感想などがあれば、ご自由にお書きください。 このような授業は久しぶりで、さらに内容がとても濃いのに驚いています。 私は大学に進学はしていませんので「答えのないことを学ぶ場所」という事を初めて知りました。昔から自分の意見を言うことが苦手なため、少しでも発言するための思考を意識できるようになればいいなと感じています。 今回の授業では、TAMASUに習った利益の共有と均等配分という理念は、現在住んでいる地域で昔から根付いていた話を80代の方々から伺っています。集落全体で共に守り分かち合う心と、自然から授かった恵みに感謝して行われる儀式の数々(六月灯・八月踊り・用しゅんかねくゎ踊りなど)は、日々めぐる暮らしの中で当然のサイクルとなっていたそうです。しかし、100人ほどが住む集落では、最近ゲストハウスが次々に建設され、人々の交流もますます気薄になってきました。八月踊りや六月灯に参加しているのは70代以上の方ばかりで、若手は私を含め2〜3人だけ。今後の継承問題が深刻な課題となっています。 奄美大島はとても大きな島なので、歴史と環境や文化を知る事で失われてほしくない物を自分の中で、より明確にしたいと思っています。そのなかで「奄美らしさの確立」につながるヒントを掴みたいという気持ちもあります。 自分はこれまでの経験から、土着知の方が得意で学知的な部分が非常に弱いと感じています。 その面で今回参加した理由も知識を学び、奄美の魅力をより深い面から専門的な知識も踏まえて、人に伝えられる言語化が必要だと思ったからです。R.5年 | 科目101 |奄美の環境文化入門与沢 裕美さん小栗(1)講義の申し込みをするまでは、恥ずかしながら「環境文化」という言葉すら認識として無かった。奄美に生まれ育ちながら、「島のこと」の無知さを痛感している。 「環境文化」概念が登場する背景にある問題という点を大事なメッセージとしてうけ止めた。生活の利便性や「本土並み」を優先にし過ぎた政治・行政施策の弊害的部分が浮き彫りになり、また、私たち奄美の「島っちゅ」も時代に翻弄されてきた中で「灯台下暗し」を続け、この問題に直面し、改めて自然と人間活動のバランスの必要性が「環境文化」の根底にあることを理解できた。(2)奄美は歴史的に途方もない長期に渡り、その時々の支配主権下に置かれ、習慣・文化・言語などが多様に変化しそのバリエーションの豊富さが結果として「答えのないこと」と考える。 それを網羅していくことは莫大な作業だが、探求したいこととして挙げるのであれば、先般の世界自然遺産登録で共同体となった沖縄が両親の出身地であるという自身の立ち位置の中で、沖縄との違いとそれぞれのアイデンティティーを探ることに期待感を持つ。 講義は、奄美にまつわるオンラインでの「講習やレクチャーぐらいの感覚」と軽い解釈で臨みました。内容のレベルの高さに驚いております。自身の無知・薄学さでどれだけついていけるかわかりませんが、可能な限りで知識習得に努めます。 今後ともよろしくお願い申し上げます。

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