奄美<環境文化>教育プログラムのしおり
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美大島在住奄 Nさん 「社会教育経営論」という講義に「地域開発」の問題、しかも戦後の奄美群島復興特別措置法に始まる一連の法の推移を取り上げるのは、特異かもしれません。しかし、「奄振」は奄美群島民にとって幸せな暮らしを創造し、持続させていく上で避けて通ることのできない重要な主題です。 「奄美環境文化入門」でもお伝えした「現代の価値観で過去を批判しない」ことは、過去の「奄振」においても同じだと思います。人が集団となり、社会を形成する以上、その時々で政治的判断を下すのは当然ですし、様々なしがらみの中でよりよい選択をしてきたはずです。したがって、過去を評価する時は、その決断がなされた当時の状況を客観的、かつ心情的に理解しようとすることが大事だと思います。そのうえで、過去の経験を糧にしながら、私たちがこれから何を選択していくのかが問われるということですね。 この一連の過程になぜ社会教育が関わるかというと、この難しい判断をしていくためには、必ず学びが必要になるからです。社会教育の原理は、学習者の自由、自主、多様性を尊重し、人が人らしく幸せに生きていくために必要な教育機会を保障することにあります。「教育」と聞くと一方的に教えられるイメージがあるかもしれませんが、社会教育が想定する教育は、「自己教育」と「相互教育」であり、自分自身で学びたいことや学ぶべきことを律する(管理する)ことであり、相互に学び合うことを意味しています。 「社会教育経営論」の講義の中に「奄振」の話題を取り上げる理由は、島の自立的発展において重要なテーマについて、一人ひとりで、また集団で考えるきっかけを提供したいと思うからです。同時に、本来社会教育とは、実際生活において本当に大事だと思う学びの機会を保障することを理念にもつことを知って頂きたいからです。 ところで、疑問に感じたという「この『内発的発展』について、奄美群島に住む、関わる全ての人々に理解して様々なアプローチで、奄美の未来を築いていくには、具体的にどのようにしたらいいのだろうか」は、この教育プログラムの中で、他の受講生と共に一緒に考えていきましょう。大学は「答えのないことを学ぶ場」とお伝えしましたが、より正確に言うと、答えを探求していく場といえます。 また、「地域課題への地元学をどう実践していけばいいのか」、「誰もが「担い手」になるためにどうしたらいいのか」といった複数の問い(疑問)は、この教育プログラムを通して、ヒントがきっと得られるはずです。(1)「第1部「地域開発」について考える」(2)「第2部地域開発の「担い手」について考える」の講義を受けて、共感したことや共感しなかったこと、わからなかったことや疑問など、講義の中で印象に残ったことを中心に感想を自由に述べてください。また、他の人に聞いてみたいことや議論してみたいこともあればお書きください。R.5年 | 科目114 |社会教育経営論1小栗(1)一番の感想は、とてもデリケートな問題でありながらも、将来の奄美群島を考える上では必ず学ばなければならない部分であると感じた。 いわゆる「奄振」は子どもこのころからよく耳にしてきた言葉ではあるが、その言葉によって奄美群島は本土に追いつけとばかりに進歩してきたし、直接的?間接的?に多くの島の人々の生活を潤してきたと感じてきた。 しかし、講義の中にも述べられていたが、“住民不在”の「外来型開発」の印象が強く、どこまでが“住民主体”なのかがよくわからず、いつまで奄美は“発展途上”なのだろうか、どこがゴールなのだろうかとずっと疑問を感じてきた。 最も共感したことは、前市長の朝山毅氏が述べた文章が約10年前であるということにもかかわらず、問題点は特に変わらないということ、原口泉氏の「公共事業が島々の生業になってしまった」ということである。 私の子どもたちと、私の幼少期の奄美の話をするときに必ず話すことは、「今の奄美が、昔の奄美と比べて、如何に便利になり、本土並みとは言わないが物が豊かになったか」ということ。でも、台風などの自然災害についてや、船が止まると物資が無くて困ることなどは、昔と何も変わらないこと。 きっと朝山氏が述べた奄美の問題点は、きっと10年後も、20年後も変わらないような気がした。でも原口氏が述べたような問題点は、世界自然遺産登録を機に、奄美の人々の目線が変われば改善していくような気がした。今回私たちが学んだことを通して、気づかせていただいた一番のことは、奄美に住んでいる私自身が「奄美のことをよくわかっていない」ということだ。奄美で生まれて、育って、子育てして、生活していても、「無知」であり、「これからの奄美の問題点に向き合っていない」ということだ。 これからの奄美がどうあるべきなのか、どうあってほしいのか、「内発的発展」がいま求められていること改めて理解した。 少し疑問に感じたことは、この「内発的発展」について、奄美群島に住む、関わる全ての人々に理解して様々なアプローチで、奄美の未来を築いていくには、具体的にどのようにしたらいいのだろうか。私たちが受けたような「学び」をどのような手段で、地域に還元していくことができるのだろうか。(2)今回の宇検村宇検集落や須古集落を散策したり、集落の方々とのお話を通して、結城氏の「『よい地域』の7つの条件」はとてもよく理解、共感できた。 学知だけではなく、島から学ぶということの実践ではあるが、難しいように感じる。地域が様々な家庭の集合体でなりたっており、各家庭の問題点も含みながら同じ地域で暮らしているということ、また、地域への関心度が各家庭で大きく異なるということ。 その地域に住んでいる人が多様である以上、考えも多様であり、地域全体の課題に取り組むときに同じベクトルの向きになることがとても難しい現状故に、宇検村集落での地域の在り方がとても成功例のように感じ、同じ奄美大島の中でも、奄美市名瀬が、その他の小さな集落と違って都会的になっているように感じ、地域課題への地元学をどう実践していけばいいのかわからなくなる。(まだ私自身の学びが足りないだけかもしれないが…) 地域開発の「担い手」を地域おこし協力隊のような特殊な職業のような立ち位置ではなく、誰もが「担い手」になるために、多くの人に気づき、学び、実践できるにはどのようにしたらいいのかわからない。22

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