憲章への道

今回報告書を作成するにあたり、タイトルをどうするかで悩んだ。報告書を作成する目的や意味ははっきりしていた。むしろ、それらを表すためのしっくりいく表現が見つからなかったのだ。完璧とまでいかないが、われわれの気持ちにずいぶん近づいたタイトルになった。

「鹿児島大学生涯学習憲章への道-大学と地域をつなぐ架け橋‐」には、前例のない未踏の地をたくさんの方と力を合わせて切り拓いたという事実を残すことに第一の意味がある。鹿児島大学生涯学習憲章がどのような議論や願い、苦闘を経て誕生したのかをしっかりと記録するということだ。憲章を生みだすために貢献したすべての方々の名前や発言内容をできるだけ残したいと考えた。名前が記載できなかった方も含め、協力いただいたすべての方へのわれわれの感謝の念と敬意の表れであると理解していただけるとありがたい。

第二の意味は、今回は決してゴールではないということだ。鹿児島大学生涯学習憲章は理念や方針を定めたものである。このタイトルは、これからも憲章の実現に向かって鹿児島大学が歩み続けることを表現する。副題の「大学と地域をつなぐ架け橋」も同じだ。憲章は、大学と地域のこれまでのつながり方に新たな指針を示している。

今回は、「鹿児島大学生涯学習憲章」策定ワークショップの記録(第Ⅰ部)と「鹿児島大学生涯学習憲章」起草委員会の記録(第Ⅱ部)の二つを作成した。第Ⅰ部は、2 分科会、12 班に分かれて 2 時間にわたる議論を行った。最後の発表からこぼれおちた内容も多い。紙面の関係上、この報告書に盛り込めなかったことは残念である。第 2 部に関しては、赤裸々な議論や資料を隠すことなく報告書にした。その行為は、われわれの至らなさをさらすことになるが、鹿児島大学生涯学習憲章が何を踏まえ、どういう議論の末にでき上がったのかを詳細に記録したかった。そのことが、日本の大学で先んじて取り組んだ者の責務ではないかと考えたからだ。いつか役立つことがあれば幸いである。

鹿児島大学生涯学習憲章という発想は、本気で頑張っている人が大学や地域にもたくさんいるにもかかわらず、閉そく感が打開できないことに端を発している。今回手掛けたことが突破口になり、新たな社会、地域、大学づくりが進むことを切に願う。

平成 25 年 9 月 19 日
小栗有子 鹿児島大学生涯学習教育研究センター 准教授
酒井佑輔 鹿児島大学生涯学習教育研究センター 講師

◎憲章の策定までの詳しい経緯は報告書「生涯学習憲章への道」でご覧になれます。→